バスケットボールとゴールという二つの円の直径はゲーム中に変わることはありません。コートの選手達も目的も同じように、限られた時間内にできるだけ多くのシュートを決めるという変わらない目的があります。
その上で、プレイヤー同士の接触やボール保持者の行動などを制限した上でゲームが進められます。
ルールブックには「シュートを放つときに、ボールのゴールに対する入射角を45度に近づけた方が良い」という文言が載ることはありません。
しかしながら、統計的に最もゴールのリングを通過しやすいシュートの軌道は確かに存在し、これを知らないままシュートの練習に励むプレイヤーが数多くいることも事実です。
一方NBAなどで活躍するプレイヤー達は、最新の科学技術やそれによってもたらされたデータを活用しながら先進的なバスケットボールの技術を磨いています。
選手によっては、自分よりも体の大きな選手のブロックを避けるために、やや高く膨らむような軌道のシュートを選択することもあるでしょう。
こういった自分の身体的特徴などの自分だけに合わせたプレイこそが本当の意味での個性と言えるでしょう。
引用元:https://www.bloomberg.com/news/articles/2016-06-08/this-robot-knows-shooting-better-than-steph-curry
ビジネスシーンにおいても「ゴールに対するボールの入射角」が存在するのではないでしょうか。もしも「事業を始める際、まずは最小限の機能を持ったプロダクトでテストマーケティングを行うべきである。」という哲学が創業者全てにあれば、決して少なくない経済的損失を防ぐことができたかもしれません。
冒頭で述べたオブジェクトはこうした誰も正解を教えてくれない事業活動において、必要な機能を果たしてくれるパーツになります。オブジェクトの三つの要素は噛み砕いていうと、「中身を知らなくても再利用できて、必要であればちょっと変えてまた使える」という特徴があります。
例えば、私たちが新規事業の立ち上げを依頼された時には「新規性があって」「属人性が低く」「スケーラビリティを持った」というオブジェクトを利用してビジネスモデルを構築していくことが求められます。もしこの事業がインフルエンサーのものであれば、セオリーとは異なり属人性が高いことが競合優位性になり得るので、ちょっと変えてオブジェクトを利用します。
シュートの成功確率を上げるために、ゴールへの角度を調整して30度、45度、60度と100本ずつシュートフォームを調整してみるという選手は非常に知性的で情熱があると評価できるかもしれません。けれどもこの直向きな努力は、1スクロールのWEBページによって代替できるものです。
そうした情報を手に入れた上で、自分の身体やプレイスタイルに合わせたシュートの特訓をすることができれば、観客を魅了する「個性的なシュート」に少し早く辿り着けるかもしれません。私たちは、こうした「知っていればしなくてもよかった努力」を一つずつオブジェクト化しながら広めていくことで、もっと個性的で効率的な社会を実現します。